作業の手を止め、ポツリと呟く。
「はぁ…甘いものが欲しい」
「甘いもの、ですか」
それをすぐ側にいた弁慶が聞き逃すはずもない。
「随分長い間手伝わせてしまいましたからね、疲労が溜まったのでしょう」
「弁慶ほどじゃないですよ!もしあたしに疲労が溜まってるなら、弁慶の方がもっと疲れてるでしょう?」
あ、そういえば、この間美味しいお菓子ヒノエから貰ったんだ。
あれ、まだ残ってるかな?
お茶をいれるついでに、それ持ってきて弁慶と食べよう。
「ね、弁慶!お茶にしない?」
「いいですね。では、僕が…」
「ううん。あたしがやるから、弁慶は座って休んでて!」
「それでは、今まで手伝ってくれていた君に申し訳ないですよ」
「お茶の用意ぐらい大丈夫だよ」
そう言って立ち上がろうとした瞬間、僅かに痺れていた足のせいでバランスを崩す。
「わっっ」
様々な香が混じったような香りに包まれて、自分が弁慶に抱きとめられた事を理解する。
「大丈夫ですか、さん」
「ごっ、ごめんなさいっ!」
「やはり、疲れていたようですね」
――― 慣れない正座で足が痺れてたんです!
…とは、ちょっと恥ずかしくて言えず、取り敢えず沈黙を守っていると、不意に細くて白い指に顎を掬われた。
「べんけ…っ!」
「…」
最後まで名を呼ぶことも出来ず、あまりの出来事に思わず硬直してしまう。
ちょっ、まっ…
今…何が起きてる!?
数秒の事が、数分にも感じられる。
触れ合っていた唇が、そっと離れていく際に洩れた甘い吐息が引き金となり、一気に熱が顔に集まった。
「!!!!」
真っ赤になってそのままへたり込みそうになったあたしの体を抱えながら、珍しく弁慶がくすくすと笑みを漏らしながら耳元で呟いた。
「ふふ…弱りましたね」
「な、な、何…が?」
動かない脳みそを必死で動かし、なんとか会話を成立させようと問いかけてみる。
「疲労した君に、糖分を補給して頂くつもりだったんですが…」
――― とーぶん?糖、分…?
糖分という単語を脳へ送り、その意味をまるで辞書でも捲るように探していると、そんなもの一気に吹っ飛ぶような言葉が耳に注がれた。
「さんという甘い花の蜜で、僕の方が酔ってしまったようです」
「……は?」
「…もう一度、君という花に酔わせて頂けませんか」
優しく甘い問いかけに、腕に抱かれた身でNOなんて言えるはずはなく…最終的にお茶をいれてくれたのは弁慶で、あたしがそのお茶を飲んだのは…眠りから覚めた後、だった。
不用意な発言は、この人の前では本当に命取りだ…と思った。
2008web拍手、名前変換入れて手を加えて再録。
お砂糖シリーズでUPしていたものです。
…滅茶苦茶甘い話書いてるじゃんっ!
書けてるじゃん…というか、美味しく頂かれてる…げほごほ。
あの時代、砂糖ないんだよね…そういうとこ、難しいです。
だからついつい現代に持って来たくなるんだよねぇ(苦笑)
はっっ!!こんにちはシリーズも再開したいんだった!
あれも、中途半端に書けてて、遙か3もリンクさせたいんだよ!
…ってか、基本遙かもコルダもテレビから引っ張り出したいんだけどね(笑)
ま、夢は大きくってことで!!